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国立新美術館で正体を知る





国立新美術館に行ってきました。
ちとくだらないことをだらだら長く書きますので(スマホ表示だと一気に全文表示されているかも、ごめんなさい)、PC表示では折りたたんでおきます。


以前、フランスに行ったとき、空港内の土産物店兼書店で有名絵画を使ったカードと絵はがき封筒のセットを見かけました。
使われている絵画は何種類かあり、その中の一つに、私は見たことのない絵だったのだけれど、POPというんでしょうか、土産物店オススメ的な飾りが付いているものがありました。「私は知らんが有名な絵なのかな」と何かに使えるかもと購入。
こちらです。





何の絵だろう。そもそも絵なのか?と思いつつ、タイトルを仏語辞典で調べるとか、その後、大々的に普及したインターネットで調べるとか何かすればよかったのに、ずっと放置。知人へのご挨拶に何枚か使用し、それから15年ぐらい経過。
今年、新聞を読んでいて、その絵に再会しましたよ。
件の絵は、フランス国立クリュニー中世美術館所蔵の6面のタペストリー「貴婦人と一角獣」だったのでした。
もうねえ、へええええ、正体がやっと分かったよ、と感動しましたさ。

中世ヨーロッパ美術の最高傑作らしいんですけれど、そんなこと全然知らなかったし。フランス国外への貸し出しは1974年のアメリカへの貸し出し以来らしいけど、そんなことも全然知らなかったし。工芸は絵画に劣らず好きなので、海外旅行をした時は工芸品を展示している博物館・美術館に出かけることも多いけれど、クリュニー中世美術館はその存在も知らなかった。

東京での展示期間は今月15日まで。今日14日、滑り込みで国立新美術館に見に行ってきました。

このタピスリー(フランスからやってきたので、タペストリーと英語読みではなく、フランス語読みで書いてみます)、至宝ではあるらしいけれど、あまり確かなことは分かっていなくて誰が注文したのかもちょっとあやふや。6面あるうちの1面「我が唯一の望み(Mon seul desir)」はそもそも何を意味するかも分からないままらしい。
でーもー、そんな研究なんてどうでもよくなるくらい、見ていて楽しいタピスリーでした。

中世美術で描かれる人間って無表情でのっぺりしていて(だからこそ能面や仏像のようにいくらでもこちらの想像次第で表情豊かに感じることもできるんだけど)、ときに退屈に思ってしまうのですが。このタピスリー、下絵が素晴らしかったのか、織師が素晴らしかったのか、貴婦人も動物も植物もみんなみんな表情豊か。6面あるうち、共通に描かれる動物もいるけれど、同じパターンを使っていても、それぞれの面ごとに別物のよう。眺めていて飽きません。

ジョルジュ・サンドがこのタピスリーを見て感動して、小説の中で描いたことにより、タピスリーが有名になったらしいけれど、その気持ち分かる。面白いもの。物語つくれちゃう。
そんなわけで、1面ずつの駄感想をだらだらと。

「触覚(Touch)」(画像はクリックすると大きいサイズになります)

syokkaku2.jpg


貴婦人が一角獣の角に触れている場面のタピスリー。一角獣も、左の獅子もなんてニコニコしてること。そばにいられること、それだけで得意げで、この貴婦人のことが大好きなんだと思う。

「味覚(Taste)」

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貴婦人がオウムだか鷲だか鷹だかに、砂糖菓子をあげているところ。食いしん坊な獅子が「オイラにもおくれ、おくれっ」とねだっていたり、貴婦人の服の裾に乗っかって目をウルウルさせて「自分にも、自分にも」と念を送ってる愛玩犬とか、「大食らいはこれだから困るぜ」と視線をそらす一角獣とか。砂糖菓子の代わりにフルーツか何かを食べてる猿に、ウサギも羊も猟犬もみんなみんな個性があって楽しい。

「嗅覚(Smell)」

syuukaku2.jpg


貴婦人は侍女に手伝わせながらなでしこの花輪を作っている場面。
忠誠を誓う自分のために貴婦人が花輪を編んでいるんだ、あの花輪は自分にもらえるんだと、一途に見つめる一角獣と獅子の表情がユーモラス。猿は「花?なにそれ、おいしいの?」と花一輪をもてあそぶ。

「我が唯一の望み(Mon seul desir)」

nozomi2.jpg

貴婦人が、侍女が持つ櫃に華やかな飾りの付いた金の鎖をしまうところ、もしくは取り出す場面。
こちらも花輪同様、この金の鎖はいつか自分に掛けてくれるんだと一角獣。一角獣より自分の方が忠誠心があるのだから、その鎖は我に、と主張する獅子。本当は自分がもらうはずなのに、一角獣と獅子に横取りされる気がする、と憮然としている愛玩犬。誰よりも自分が貴婦人のことを愛しているんだ、寵愛をもらいたいんだという競い合いを感じてしまう。

「視覚(Sight)」

sikaku2.jpg


貴婦人が手鏡で一角獣に姿を写して見せているところ。
自分の顔にうっとりする一角獣。貴婦人の膝に前足をおいているところなんて、可愛すぎる。それに対して「けっ、相変わらずナルシストだぜ」とあきれ顔の獅子。
貴婦人は、これ、実物を見ると、目が結構落ちくぼんでいて、クマもあって、他の面は美人なのに疲れ切ったイメージ。「あなたは若くていいわね」と、老けないユニコーンに鏡を見せているのかも。

「聴覚(Hearing)」

tyoukaku2.jpg


これ、一番笑いました。…貼った画像では非常に分かりづらいのだけれど、できれば大きいサイズで見ていただきたい。貴婦人以外、みな、とても微妙にしょっぱい顔をしているのです。
貴婦人は満ち足りた顔でオルガンを弾いているのだけれど、オルガンのふいごを動かしている侍女も、身を横たえている一角獣も、幟をたずさえている獅子も、ほかの動物たちも、微妙に居心地の悪そうな顔をしている。ほかのタピスリーの「貴婦人大好き!貴婦人ばんざい!」という一直線の愛情だけじゃない表情をしている。
きっとジャイアンのリサイタルみたいな状況なんだろうなと想像。貴婦人、オルガンの演奏が下手なんだと思う。じゃないと、ほかのタピスリーと違う動物たちの表情の説明が付かない。

植物や動物、それぞれに寓話的な意味合いを持たせていて、それをまじめに解釈したら深く勉強になるのかも知れないけれど、動物好きな私としては、ただただ変顔の動物たちを見ているだけで大満足。フランスで鑑賞してもきっとわけがわからなかっただろうから、日本でこの展示を見ることができて良かった。この変顔、伊藤若冲が描く動植物を思い起こします。

もちろん動物の表情はさておき、タピスリー自体の表現が素晴らしいです。貴婦人や侍女の衣装や髪型に飾りも、ミル・フルールと呼ばれる数々の花の意匠もどれも見応えあり。タピスリーをこんなに堪能したのは初めてでした。


さて、熱く、うるさく語ったところで、おやすみなさい。もう少し暑さも収まりますように。って、まだ7月半ばなのにこんなことを願うなんて。これから続く夏はどうなっちゃうんだろ。

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